エッセイ

過敏性腸症候群 IBSによる1年分のピンチをギュッと凝縮、恐怖のなかみなと事件【面白いエッセイ】

 

私は20年ほど前から、過敏性腸症候群(IBS)を患っている。
正確には17年前からだが、このペースだと3年後にも治ってはいないと思うので
ざっくり 過敏性腸症候群歴20年でいいかな、といったところだ。
IBSとは、 血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められないにもかかわらず
下痢や便秘を慢性的にくりかえす疾患 である。

私の場合はメインが下痢で展開される通称“下痢型”だ。
日常生活に支障をきたすこの疾患、
このブログでも度々 IBS によりもたらされたピンチ事件をご紹介してきたが
私の人生のすでに半分近くを彩る輝かしい IBS の歴史の中で
最もおぞましく、恐怖の大事件として自分史に刻まれるのが
“なかみなと事件”である。

歴史の授業であれば、先生が確実に「はい、ここテストに出まーす。」と
黒板をツンツンするであろう “なかみなと事件”
これは IBSによる1年分のピンチを最大限に凝縮したと言っても過言ではない、
恐怖の体験である。

“なかみなと事件” 勃発



私がまだ20代のある日のことであった。
まだ子供たちが生まれる前のことである。
その日、世間は3連休ということで、お天気も気持ちの良い晴れであった。
せっかくだから、どこかお出かけでもしたいねえ。
ということで、主人と義母の3人でドライブがてら
茨城県にある那珂湊(なかみなと) おさかな市場に出向くことになった。
私は幼少期に親の転勤の都合で関東を転々としており
茨城県にも住んでいたことがあった。
その幼少期にも何度か両親となかみなとを訪れた記憶があり
懐かしさとともにワクワクしながら道中のドライブを楽しんでいた。

気持ちよく晴れたお天気の中でのドライブは最高だ。
道中は、すこぶる順調であった。
高速を降りるまでは。。。

3連休ということで、なかみなとの市場に近づくにつれ、
だんだん渋滞の列ができ始めた。
最初はノロノロ、どんどん進みが悪くなり、
とうとう全く車が動かない大渋滞へ。
しかも田舎道で店舗等が何もない、両サイド住宅街という状況での大渋滞だ。
その時である。

ゴロゴロゴロゴロ。。。。。。

先ほどまで何ともなかった私のお腹は、急激に降下を始めたのだ。
まずい。。
慌ててバッグの中から IBS で処方されている大量の薬を取り出すと
まとめて口に放り込む。
でも、その時私はすでにわかっていた。
お腹が 急降下し始めてからいくら薬を服用したところで
下痢をとめることができないことを。。。

ほとんどすすまない車の列、どんどん降下してくる私のお腹。。
やばい。どうしよう。
でも見渡す限り民家しかない。
こんなに進まないなら、もしかして徒歩の方が早いだろうか?
車を降りて歩いたら、おトイレ借りられそうな何かのお店が見つけられるかも?
でも歩いているうちに限界がきたら。。
大渋滞で、車の中で暇を持て余している人たちの前で公開処刑か・・・!

ノロノロと徒歩レベルのスピードで進む車。。
降りようか。。それともこのまま乗っていた方がいいのか。。

でも。。
どうしよう。。

やっぱり降りようか。

降りて歩いてみようか。。
もしかしたら背の高い草むらでもあるかもしれない。
そんなのがあれば隠れられるかもしれない。。

でもそんなの無くてずっと民家ばっかりだったら
やっぱり渋滞の車から丸見えだ。。
けどこのままじゃ。。

あぁもうだめだ。
イチかバチか、車を降りるにかけてみよう!!
どうせこのまま車に乗っていても、私はジ・エンドだ。。

そう決意した瞬間だった。

「コンビニだ!!」という主人のおおきな声。

え・・・・・!!!!ლ(இ e இ

絶望の中にいた私に光がパッと差した。
慌てて前方を確認すると確かによく見慣れたコンビニの看板が目に飛び込んできた。

ホントだーーーーー!!
助かったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

もう少しだ。もう少しの辛抱だ!
これで大惨事は免れた!!

限界まで追い詰められた私だが、神は私を見捨てなかったのですね。。

「痛みに耐えてよく頑張った。感動した!!」と小泉元首相がトロフィーを渡してくれるんじゃないか。
そう思うほど私は限界を超えて耐え抜いた。

ようやくコンビニに到着。

助かった!助かった!

そう思いながらコンビニに入ると、
目を疑う光景が広がっていた。
なんと、お店の一番奥にあるトイレから、順番待ちの渋滞がお店の入り口まで続いていたのだ。

もはやこれまでか・・・。

終わった。。。

膝から崩れ落ちそうになった。

もうだめだ。。ここまででもう限界だったのに。
これ以上なんて・・・。

とりあえず列の最後尾に並び、両手で顔を覆った。
もう無理だ。
本当にもうダメだ・・・。

でも。。。
このままコンビニのトイレの列で漏らしてしまうなんてのは2歳児までの特権であり
20代の私がやったらそれこそここにいるすべての見知らぬ人々の記憶に一生残るであろう。

列からコンビニの外を見てみると、たくさんの車が出入りしている。
そっちはダメだ。死角がない。

ではお店の裏手は・・・?
だめだ、ゴミ箱とかがあって、わりと頻繁に店員さんが廃棄品の処分などにやってきたりするはずだ。

待てよ、コンビニの後ろ側は海だな。。

このまま、まともっぽい見た目の人間がこのコンビニで漏らしてしまうなら
いっそ何かに憑りつかれたように奇声でもあげながら走り出し、海に飛び込んでしまおうか。

その瞬間に海中で用を足し、「すみません、取り乱しました。」と、
何食わぬ顔で海から上がって車に戻ってくるというのはどうだろうか?
いや、それはいくらなんでも取り乱したの一言で済む状況では無い。

考えている間にも大波小波が私のお腹に何度も押し寄せる。
そっとしゃがんでみた。
かかとでお尻に蓋をする。

もうだめだ。。

そっと天を仰いだ。

そして何気なく後ろを振り向いてみた。
あれ?もう後ろにこんなに並んでる。。

気づいたらなんだかんだで少しづつ前に進んでいるじゃん。

よし・・・。
心が決まった。ここまできたのだから、
限界を迎えるその時までこの列に並んで耐えよう。
そしてこの列にいながら限界を迎えてしまった場合は、走って海に飛び込もう。
馬鹿になろう。

そう決心し立ち上がると静かに目をつぶって深呼吸した。

大波小波、大波小波の連続。。。
そして、ついに、ついに私の番が回ってきた。

私の前に入っていたのは5歳くらいの子供であった。
のんびりでてきた子供を押しのけることもなく
最後まで余裕をみせて振舞った。

トイレに入り、便座に座ると内側から湧き出るほどの大きなガッツポーズが出た。

やったぁぁ!!!!!
漏らさなかったーーーーーーーーーーーーーーー!!!(´༎ຶ۝༎ຶ)

あの瞬間ならヒーローインタビューにも饒舌に答えることができそうであった。

『放送席、放送席、渋滞の中、見事に下痢を乗り切ったsawachinさんです』
ありがとうございます!

『厳しい戦いとなりました。心境をお聞かせください』
はい。コンビニでさらにトイレ渋滞を目の当たりにした時には
さすがにもうダメだと思ったんですけど
なんとかゴールにたどり着けて良かったです。

『この戦いを振り返って、勝利の一番のポイントはどこだったと思いますか』
そうですね。最悪の場合を想定してそれを受け入れたことで最後の力が出せたかなと思います。

『この喜びを誰に伝えたいですか』
はい、やはりそばで励ましてくれた主人に伝えたいです。

『素晴らしい戦いでした!おめでとうございます!!!』
ありがとうございます༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ ༽!!!!

(妄想)
・・・・・・・・・・

これが、私の歴史に残る最大の事件、なかみなと事件の全容である。
その後訪れたなかみなとお魚市場についての記憶は一切残っていない。

これまでの数々のピンチや、現在も日ごろ積み重ねているピンチもたくさんあるが
IBSによるピンチ自体、すでに日常化しているという現実がある。

これからも長いお付き合いとなるであろう過敏性腸症候群。
なんで私だけ・・・。と悲観的になることもあるが
実はこの疾患で苦労している人たちは世間にはかなり多く存在しているのである。

どうせ逃れられないなら、なんとなく上から笑ってやろう。
または IBSの同士達に 「かわいそうなやつがここにもいる」と
笑ってもらえたら本望である。


すれすれなるままに 過敏性腸症候群(IBS) VS 私

ABOUT ME
富岡紗和子
神奈川県湘南在住、占い師(帝王命術売占い鑑定師・四柱推命鑑定師)ラジオパーソナリティ・エッセイ作家・法人役員(役員暦24年)の富岡紗和子です。 現在、二人の娘を持つ母でありサーフィンとビールをこよなく愛するアラフィフ女子です♪ ⇒ ⇒ 詳しいプロフィールはこちら

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