先日、たまたま夕方お友達とスーパーで会い、「今日の夕飯何にする―?」などと話していたときのことだった。
そのお友達は『今日はハンバーグにする!簡単だから』と言っていた。
私が、ハンバーグめんどくさいじゃん。と言うと、お友達は「材料全部フードプロセッサーにぶっこむだけだよ。フードプロセッサーってすごい便利だよ!」とフードプロセッサーのカリスマ販売士のように勧めてきた。
私の中で玉ねぎのみじん切りは非常に面倒な作業の一つであるため、その作業が必須であるハンバーグはちょっと面倒なメニューの位置づけである。
そのハンバーグを『簡単』と言ってのけるとは・・・。
一気にフードプロセッサーが欲しいという気持ちが湧き上がってきた。
自宅に戻るとさっそく主人に『フードプロセッサーってめちゃくちゃ便利なんだって!』と熱い報告をしてみた。
『フードプロセッサーがあればみじん切りとか超早くてハンバーグもすぐできるし、ニンジンとかも秒速で細かくなったり、あとは・・・』と熱弁をふるう私に被せるように主人は一言、『お前そんな料理しないじゃん』と切り捨ててきた。
う・・・。図星だ・・・。
私が普段みじん切るのは玉ねぎだけだ。
玉ねぎのみじん切り(主にハンバーグの日限定)のためだけに1万円くらいのフードプロセッサーって確かにいらないな・・・
我に返った私は一気にフードプロセッサー熱が冷めていくのを感じた。
思い起こせばいつもそうだ。
先日は量販店で同様の商品の宣伝に目が釘付けになり『小魚も一気に細かくなり、カルシウムたっぷりのふりかけができます』というフレーズに心を揺さぶられた。
だがこの商品を買って小魚でカルシウムたっぷりのふりかけを作るとしても、おそらく一度きりになってしまっただろう。思いとどまってよかった。
宣伝文句にすぐに心を奪われるのは私の悪いくせだ。
早朝に一人で通販番組などを見ていると、止めてくれる人がいないため一気に購買意欲が加速してしまい度々後悔することとなる。
そして後悔と言えば何度も後悔を繰り返してきたことが一つある。
化粧品である。
ドラッグストアなどに、人気歌手やモデル、女優などの大きなポスターが飾られ、大々的に宣伝されている化粧品やメイク用品。
このリップを使えば安室ちゃんみたいになれるかも!やら、このマスカラ使えばAYUみたいなパッチリお目目に・・!?などと毎回毎回、化粧品会社の戦略にまんまとはまってきた。
よく考えれば、リップやマスカラを変えただけで安室ちゃんやAYUになれるわけなど無いのだ。そもそもの造形がかけ離れ過ぎている。
こんな当たり前のことを毎回見失って、踊らされてきた。
そして、今年41歳になった私。
先日、よく行くドラッグストアで買い物をしていた際、滝澤カレンの大きな写真で宣伝しているメイク用品が目にとまった。
今、大人気の滝沢カレン。やっぱりかわいいなぁ。
よく見てみると、アイシャドーの棚の【滝沢カレン使用色】とポップが貼られたカラーだけが完売となっていた。
あ~ぁ。またみんな乗せられちゃってぇ。
【滝沢カレン使用色】を使ったところでこの顔になんて絶対なれないし、なんなら翌朝そのアイシャドーを使った自分の顔が【滝沢カレン使用色】を使ったのにも関わらず滝澤カレンと遠すぎることに愕然とするのが関の山だ。
そんな体験を私は死ぬほどしてきた。
私もようやくそのような化粧品会社の戦略にハマらない冷静な判断力を身に着けることができたのだな・・。
私は自分の成長を感じ、【滝沢カレン使用色】に飛びついた女子たちに対して若干の優越感を感じながらその場を離れた。
その後、何度かそのドラッグストアで買い物をする際に確認していたが、【滝沢カレン使用色】はずっと完売で棚はカラになったままであった。よほどこのアイシャドーに全国の女子たちは飛びついたんだな。
滝沢カレンにはなれないのに・・・。
それから1か月後。
いつものように日用品の買い物の為そのドラッグストアを訪れ、何気なくメイク用品のコーナーを見るとずっと完売で棚がカラになっていた【滝沢カレン使用色】のアイシャドーがついに再入荷されていることに気が付いた。
あっっっっっ!!
滝沢カレン使用色が再入荷されてる!!!!
気付いたら私は反射的に走り出していた。
そしてまわりにだれもいないというのに、ビーチフラッグスのように【滝沢カレン使用色】のアイシャドーに飛びつくと急いで自分の買い物かごに放り込み、ついでに滝沢カレン使用のリップカラーまで一緒に購入していた。
ごめんなさい。
【滝沢カレン使用色】に飛びついた女子たちのことを、この顔になんて絶対なれるわけないのにとか、化粧品会社の戦略にはまって哀れとか、ましてや私は化粧品会社の戦略にハマらない冷静な判断力を身に着けたとか・・・
そんなこと言ってごめんなさい・・・
ほんとは私もずっと欲しかったんです・・・滝沢カレン使用色・・・
翌朝、【滝沢カレン使用色】のアイシャドーと【滝沢カレン使用色】のリップカラーを使って張り切ってメイクした私は、自分の顔面レベルが滝沢カレンとあまりにもかけ離れていることを改めてまざまざと思い知らされ、力なく笑ったのであった。
こういう気持ち、人生で一体何度目だろう・・・
きっとこれからも私はかわいい女優さんやらモデルさんやらを起用した化粧品会社の戦略にどっぷりはまり続け朝の通販番組にも激しく心揺さぶられるのだろう・・。
単純な性格と言うのは、年齢を重ねても変わらないものだ。
そうつくづく実感したできごとであった。