エッセイ

猫に癒されに行ったのに、全猫に逃げられ放置される

猫カフェ 猫が来ない

あと数日で9月も終わってしまう。あっという間に10月がやってくる。

テレビでもハロウィン関係の商品が特集され、スーパーの特設コーナーでもハロウィン関係のグッズがたくさん販売されている。

私の子供の時代などはまだハロウィン自体が無かったので、
いまだにハロウィンってなんのためにやっているのかあまり理解できていない私がいる。

私も今10代だったら、きっと渋谷の仮装行列にも参加したかなぁ~などと
毎年ハロウィンパニックのニュースを見るたびぼんやりと考える。

40代になった今、この時期に強く思うのは、ハロウィンが終わったとたんにクリスマス、
クリスマスが終わったとたんにお正月!というめまぐるしさだ。

なんだかイベント戦略にうまく乗らされて、お金を使わされているような気がしてならない。

今となってはこんなうがった考え方をしてしまい、どこか冷めた気持ちで見てしまっている自分がいるのだが
こんな私でもまだ20代のころはそれなりに年末年始のイベントに乗って楽しんでいた。

年末年始のイベントと言えば、20代半ば頃のあるクリスマスが深く心に残っている。

そのころ私は仕事のことですごく悩んでいて、過敏性腸症候群の症状もひどく出ており、心身共に疲れ切っていた。
そんな折、高校時代からの友達が
『たまには出かけて気晴らししようよー』と誘ってくれたのだった。

心に刺さったクリスマス

ちょうど朝の情報番組で、クリスマスのイベント特集をやっていて、
その番組で池袋のサンシャイン水族館のクリスマスイベント特集を目にした。

クリスマスの期間は、飼育員さんがサンタクロースの格好で潜水して
お魚のえさやりをするところが見られるということで
じゃあ、せっかくだからサンシャインいってみようよ!と話がまとまり、
友達と二人で張り切って出かけた。

サンシャイン水族館に到着すると、テレビでやっていたように
本当にサンタクロースの格好の飼育員さんが水中にいて
ボンベの泡をぶくぶく出しながらお魚にエサやりをしていた。

『あ!ほんとにサンタさんがいるよー!さわちん・・・!!( ´艸`)』
『ホントだ!』

そう一瞬盛り上がったのだが、クリスマス時期に20代半ばの女同士、
なぜ二人でここにいるんだろうね・・

家族連れとかカップルならまだしも・・ということにほぼ同時に気づいてしまった私たちは
なんとなく寂しい気持ちになり、顔を見合わせてハハハ・・と力なく笑った。

気をとりなおし水族館をひと通りまわり、ざっと見終わったところで、友達が、
『今、猫ちゃんがたくさんいるイベントやってるらしいから行こうよ!』というので早速行ってみることにした。

そのころ、ちょうど世間では『猫カフェ』なるものがポツポツとでき始めていて少しづつブームになっていた。

おそらくその流れでサンシャインでも特設会場ができ、
猫ちゃんがたくさんいる部屋に人間が放流されるという
期間限定イベントが行われていたのだ。

私は中学生のころから猫を飼っていたので、猫の扱いはそこそこ慣れてるし、
かわいい猫ちゃんたちと触れ合って
日ごろのクサクサした気持ちを癒してもらうぞー!!
おーーッ!と気合を入れて会場に入った。

そこは今の猫カフェのようにソファがあったり、コーヒーが飲めたりというものではなく
本当にただのだだっ広い会場にたくさんの猫がいて、
その会場に人間が入って行って、猫と触れ合うという原始的なスタイルだったが
会場に入るとすでに先に入場しているお客さんたちは座って猫を抱っこしたり、
寝転ぶ猫のそばに寄り添って頭を撫でたり、思い思いにその空間を楽しんでいた。

『わー、猫ちゃんいっぱいいるね!』
そう話しながら私たちも近くに座っていた猫に近づいたのだが、
なぜか私たちが近付くと猫はサッと起き上がりどこかへ移動してしまった。

あら?ご機嫌悪いのかな。

ま、猫は気まぐれだからね!とあまり気にせず、
他の暇そうな猫にターゲットを定めて再び近づいてみた。

だが、その暇そうな猫まで私たちが近付くと面倒くさそうに立ち上がり、
どこかへ行ってしまったのだ。

あ、あれ・・・?

数回そんなことが続き、気が付くと私たちの周りには猫が1匹もいなくなり
だだっ広い会場の床に大のオトナの女が二人、ポツンと体育座りをしているという珍百景が出来上がっていた。

なんなんだろう、この辱めは・・・。

何か気に障ることしましたか?

猫に癒されようと張り切ってやってきたのに近づく猫全員に避けられ、
人間二人で会場の真ん中で、ただ体育座りをしている。

友達は体育座りをしたまま、絞り出すような声で『つらい・・・』とつぶやいた。
私はうつむきながら『うん・・。』と答えるしかなかった。

その時私は、チヤホヤされたくてお金をだしてキャバクラに行ったのに、思うように相手にされず急にキレて怒り出すおじさんの気持ちが少しわかった気がした。

会場に来ている他のお客さん達も、
『あれ?あの二人、人間だけでなにしてんだ?』と思っているに違いない。

ただ猫と触れ合いたいだけなのに・・
他のお客さんはほんわかした癒しの時間を過ごしているのに
私たちは猫全員に避けられ、こうして人間だけで座っています・・・。

もう、恥ずかしくて顔を上げるのも勇気がいるレベルだった。

下を向いて体育座りをしたままそっと視線だけを上げると、
かわいらしい20歳くらいの女の子に猫が3匹まとわりついているのが見えた。

猫たちにやさしく微笑みかける彼女。
そしてその隣りには、猫たちと戯れる彼女をやさしく見守る彼氏の姿があった。

私はそっと拳を握りしめた。くそ・・・
そして、“思い切りショルダーバッグを振り回しながら
『散れ~~~~!!!(怒)』
突進したい”衝動を必死にこらえたのであった。

会場を後にした私たちはどっと疲れが増し、
寒さに凍えながらそそくさと池袋をあとにした。

あれから15年ほど経過した今でもこの時期になると一度は思いだす、
猫たちに思い切り傷口をえぐられた、女二人の辛すぎたクリスマスの思い出である。

今年もなんとなくハロウィンはやり過ごし、
怒涛のごとく子供たちのクリスマスとお正月で出費がかさみ
あっという間に新年が始まるんだろうなぁ。

年齢を重ねるにつれてイベント事に重きを置かなくなった自分に、
キラキラした目でイベントを楽しんでいる子供たちが眩しく感じる今日このごろである。

ABOUT ME
富岡紗和子
神奈川県湘南在住、占い師(帝王命術売占い鑑定師・四柱推命鑑定師)ラジオパーソナリティ・エッセイ作家・法人役員(役員暦24年)の富岡紗和子です。 現在、二人の娘を持つ母でありサーフィンとビールをこよなく愛するアラフィフ女子です♪ ⇒ ⇒ 詳しいプロフィールはこちら

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