数年前から、スーパーに行くと野菜の袋や卵のパッケージに、生産者の顔写真や名前が貼付けられているものを見ることが多くなった。どんな人が作っているのかわかった方が買う方も安心感があって選びやすい・・・・か???
農薬漬けになった中国産の果物や野菜などの映像をよくテレビで見かけた時期でもあり、確かに国内の農家の方の写真が貼られた野菜は安心感が高いだろう。
しかし私はその時は正直、『ここまでしないといけないのか?』という感想を持った。慣れないのか、なんともぎこちない表情で写真におさまったおじいさんの顔が付けられたジャガイモの袋を手に取りちょっとおじいさんがかわいそうにも感じたし複雑な気分になったのを覚えている。
だがここ数年で、時代はだいぶ変わってきた。SNSやYouTubeなどで、一般人がふつうに顔を出して発信するのもごく普通のことになった。
あの時ぎこちない表情の写真をジャガイモの袋に貼り付けていたおじいさんも、もしかしたら今頃ノリノリで撮影に挑んでいるかもしれない。
最近は車で大通りを走っていると、道の脇に立っている企業の大きな看板にも、そこの社員さんだか社長さんだかの写真がデカデカと出されているものを本当に多く見かける。
歯医者さんの看板に大きく歯科医の顔が出ていたり、工務店の看板に職人さんらしきおじさんが笑顔で写っていたり・・・。確かに優しそうな表情の歯科医や、人のよさそうな職人のおじさんだったら親しみも涌くし、安心感も感じるしそのような看板は作戦として成功だと思う。
しかし、最近非常に気になるのが『あなたの顔は絶対にのせないほうがいい』と指摘したくなるタイプの看板だ。
私がよく通る道路にデカデカと掲げられた不動産屋の看板には、
“わたくしこれまで多くの人々を騙して金銭を巻き上げ、私財を肥やして参りました!!!”と言わんばかりの悪そうな企み笑顔をした男性の顔写真がドーン!と掲げられている。そこの社長さんなのだろうか。手元までは写っていないが、ごっつい金の指輪をメリケンサックのように全指にはめているのではないかと予想してしまうほどだ。
ここまでの『悪徳顔』が看板に大きくでているとなると、もうなんだか会社をあげて堂々と悪いことをしていそうな気すらしてくるし、宣伝として逆効果なのではないかといつも気になっている。
車を運転しながら色んな看板を見かけてはそんなことを考えている今日この頃だが、つい先日、よく聞くラジオの番組にリスナーさんが投稿していたある話が非常に興味深かった。
そのリスナーさんは女性で、居酒屋を経営しているのだが、以前にラジオに出演して宣伝した時はたくさんお客さんが来てくれた。しかしその後、全国放送のテレビに出演する機会があり、テレビに出て宣伝したのにその時は全くお客さんが来なかった、というのだ。
ご本人は自虐的に、「ブスだから」などと笑いでまとめていたのだが、ブスだから美人だからは置いておくとして、実際、ラジオのように顔が見えない媒体で宣伝すると、リスナーの人たちは色々と想像を膨らませて興味を持ってくれたという部分があったのかもしれない。それがテレビのようにお店の外観も映り、経営者の女性も顔を出して出演するとなると、実際やや興味が薄れてしまうものなのか・・・。
つい最近は、「顔出しをしないYouTubeが人気」などというニュースも見かけたところだ。顔が見えないことで逆に興味がわくという部分は人間の心理としてやはりあるのだろう。
そこでひとつ疑問が浮かんでくる。
私はこのブログで、アイコンに顔写真を出しているのだが、果たしてそれは正解なのか否かということだ。このブログを始めた当初から、やるからには色んな人に読んでもらいたいし興味とか親しみを持ってもらいたいと顔出しで記事を公開し始めたのだが、もしかすると微妙に顔が見えないくらいの方がもっと興味を持ってもらえるのだろうか・・・。
よそ様の会社の色んな看板を見上げては「めっちゃ悪徳顔」「麻薬で一度は捕まってそう」「すぐ契約しないと脅されそう」等々、勝手な評価を下し、『あなたの顔は絶対にのせないほうがいい』など偉そうに言っている私だが自分のこととなると冷静な判断力に欠け正解がわからなくなってくる。人間とは不思議なものだ。
そのうち、私のアイコン写真が「家政婦は見た」の市原悦子さんのように、ドアから半分の顔出しになっていたら・・・
その時には、「迷走しているな・・・」と優しく見守っていただきたいと思う。